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オリジナル創作小説に関するあれこれを書き連ねる
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 青汁1はこちら
 前回から一ヶ月以上経ってしまっt すみません…
 青汁続き一応アップです。メイ中心です。恥ずかしいでs
 このエピソード削ったほうがいいかなあと思いつつ今からまた変更したらまじ終わらないのでこのままいきます。
 ここまでで時空一章分…
 続きからにしまいます


 メイは花壇をぐるりと囲む木のベンチに腰かけ、頭を垂れ所在なさげに足をぶらぶらさせていた。しばらく前まで街をふらついていたが、どうにも行く場所がなくて、ずっとここにいる。というのも、何もすることが思いつかないから。 
 いや、ほんとうは、絶対に何かやることがあったはずだった。心がなんとなく空虚で、頭はどうにももやもやとはっきりしないから、思い出せないだけで。
 ――ことのおこりは三日ほど前。
 
『あの……これ、読んでください!』
 少女はブルーに封筒を押し付けると、ぽっと頬を薔薇色に染め、顔を背けた。
『へ、へんじ、待ってますっ』
 それだけ言うと、逃げるように駆けて行ってしまう。
『……誰だ』
 しばらく無言が続いた後、ブルーが木の陰に隠れて見ていたメイに問いかける。
『宿屋の子だよ。……お前のこと、よく見てたよ』
 メイは少女のことを知っていた。最近ちらちらこちらを――ブルーを見ていた少女だ。
 シルバーだか誰かに、どうもブルーのことが好きらしい、と聞かせられていた。
(話したこともない人のこと、……その、好きになるものなのか?)
(なるよ。ひとめぼれほど強いもんもないよ、案外)
 シルバーは笑ったけれど、メイは納得がいかない。

 ブルーは最近背が伸びて少し大人っぽくなった。
 そして、女の子がよく近寄ってくるようになった。
 そばにいると、彼に好きな人はいるのかとか、二人はつきあっているのかとか、そんなことばかり、聞かれるようになった。
 ――たしかにちょっと「かっこよく」なったけれど、今まではみんな暗い、怖いと避けていたのに。今まではそんな話、されなかったのに。
(……なんでだろう)
 メイは不思議になった。
 今まではただのともだちでもそばにいられたのに、突然、そばにいるには「女の子」じゃないといけなくなった。
 だって、こいびとが出来た瞬間、こいびとが一番になってしまうから。こいびとは「女の子」じゃないといけないから。
 もしメイがほんとうに男の子なら友達のままでいられるが、そうはいかないことは分かっていた。
 ブルーのそばにいるためには、女の子にならなきゃいけない。
 ……ただのともだちは決して、こいびとには勝てない。
(でも、どう違うんだよ)
 さっきの女の子はかわいかった。
 頬にかかる栗色の細い髪。目はくりくりして愛らしい。気立ても良く優しいと聞く。こいびとにふさわしい。
 自分は女の子らしくないから、ブルーのこいびとにはふさわしくないかもしれない。
 ――けれど、いくらきれいですてきな女の子だって、ブルーのことをよく知らない人が、ブルーのいちばんになるなんて。
(ブルーが、字を読めないのも知らないのに……)
 メイはなんだかむかむかしてきて思わず手紙をにらむ。
 ブルーは手紙に目を落とし、少し困ったような顔をした。なんとか少しずつメイが教えて、自分の名前と、看板くらいは読めるようになったけれど、まだ読める言葉は少ない。
 だから、ブルーの次の言葉は、分かっていた。
 ……分かっていたけれど。
『メイ、これ、』
『ブルー、お、おれ、ちょっと用事思い出した!』
 彼がほんとうにその言葉をなぞりかけたとき、唐突に胸のわだかまりがこみ上げてきて、思わず走り出してしまったのだ。
 それから、ブルーには会っていない。
 
(俺、何やってるんだろう……)
 読むよ、とただ一言言えばいいだけだったのに。ブルーを傷つけてしまった。 
 すぐ冷静になって、あやまらないと、と思ったのだが、目を合わせるのが気まずく、足が向かなかった。
 それに。
(俺……いつもべったりくっついてて、嫌われてなかったかな?)
 離れてみれば、いつも一緒だったことに気がついた。
 そして、急に不安になった。
 メイは女の子なのに「俺」なんて言っておかしいし、変だ。
 そんな変な人が、四六時中近くにいて、ブルーの間違ったところをいちいち指摘するのはうっとうしかったかもしれない。邪魔だと思っていたかもしれない。
 ……嫌われているかもしれない、ブルーは誰か他の人にあの手紙を読んでもらって、あの女の子のほうがずっと優しい、メイよりいいと考えているかもしれないと思うと、どうしても顔をあわせるのが怖かった。
 そんなこと、今まで全然考えもしなかったのに。
(でも、あやまらなきゃ)
 メイは意を決して顔を上げた。
 怖くても、やったことは自分が悪かったのだから、あやまらないといけない。元どおりになるとは限らない。前みたいに一緒にいることは出来ないかもしれないけれど。
(あやまって、……それから考えよう)
 何かがちくりと胸を刺した。メイは気にしないことにした。

 *
 
「まったく、付き合いきれないな……」
 シルバーは頭を掻いて呆れたようにため息をついた。ブルーがあまり酷い目に遭わないようにと、ジルを静止するためにしばらく二人を見ていたのだが、彼らのやりとりがあまりにも奇天烈すぎて疲れきって放棄したのだった。
「そういえば、メイちゃんずっと二人のところに来なかったみたいだけど、やっぱりあのせいかな?」
 ブルーが手紙を渡されたのを見て、思わず走ってきてしまったのだというメイに、偶然会ったときのことをシルバーは思い返す。
 メイは明るく振舞っていた。不自然なほどに。
 ふと見せる表情が苛立ちに哀しみに激しく移り変わる。その様子がどうにも異様なので、事の次第を聞き出したのだ。
 
『――メイちゃん、それってもしかしてやきもちやいて』
『や、やいてない! そういうんじゃないって言ってるだろ! 俺たち、そういうんじゃなくて、ただの友達だってば!』
 メイはただの友達というセリフが好きらしい。いつもどおりの否定をする。
『た、ただ、あの子にブルーは無理っていうかかわいそうっていうか、あの子にブルーはもったいないだろ! ブルーは暗いし、すぐ怒るし、笑わないし、気遣いもできないんだぞっ!』
『……じゃあどうして君はブルー君のことが好きなの』
 妙に幸せそうに言うメイにシルバーはあきれる。
『好きじゃないってば!』
『あ、嫌いなんだ?』
『な、なんでそうなるんだよ! ……もうっ、ばかにするな!』
 メイはそれだけ言うと、ぷいと顔を背けたが、シルバーはその頬がみるみる赤くなっていくのを見逃さなかった。
 ――奇特な人もいるもんだな……。
 おそらくシルバーにとっては、永遠の謎である。
 宿屋の娘は分かるが、メイはブルーの本性もよく知っているはずなのに。
 もしかして、シルバーの見る赤とメイの見る赤が同じとは限らないかもしれないのと同じように、シルバーの見るブルーとメイの見るブルーは違うのかもしれない、とシルバーは思った。
 
「あれ。メイちゃん」
 ふと、噂の奇特な人のマントが視界に入り、シルバーは手を振る。振り返ったメイの顔ははっきりと青ざめていた。シルバーは眉をひそめる。
「どうしたの? えらく思いつめてるみたいだけど」
 メイは顔をこわばらせ、ぎゅ、と拳を握る。
「わ、わた、わたし、は、べつに……」
 メイはおどおどと視線を右に左に泳がせる。シルバーは意を突かれ呆然とする。
 だって、あのメイが、「わたし」、だなんて。
「……メイちゃん、どうしたの?」
「ふ、ふん、おまえにはおんなごころはわかんないだろ!」
 あらかじめ用意された台本を読み上げているようなぎこちなさ。聞いてはいけなかったような台詞にシルバーはいよいよおそろしくなる。さっきといい、今といい、メイはいったいどうしてしまったのだろう。
「メイちゃんどうしたの? なんか、おかしいけど」
 ぴたりと動きを失い、メイが静かになる。
 ふっと無表情になったかと思うと、じわりと顔をゆがめた。
「どうせ、おれは、おかしいもん……」
 震える声でぽつりと言う。
「え、……!」
 泣きそうな顔をすると、弾かれたように駆け出して行ってしまう。シルバーはつかの間言葉を失いその場に突っ立っていたが、慌てて追いかけた。
 
 それからメイを捕まえて話を聞くのに、しばらくの時間を要した。
 
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