オリジナル創作小説に関するあれこれを書き連ねる
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完結です!!
遅くなってすみませんでした…
あとがき・まとめた更新などはまたあとに。
遅くなってすみませんでした…
あとがき・まとめた更新などはまたあとに。
リュオンがジルの元へとぱたぱたと息を切らし尋常じゃない様子で走っていく。リュオンを捕まえたシルバーが、これまでのあらましを話したら「たいへん!」と一目散に駆け出したのだった。
「おお、リュオン、どうした?」
それに気づいたジルが手を振り、どうしたどうしたと頭を撫でようとするが、逆に肩をつかまれ目を丸くする。遅れてついてきたシルバーもぎょっとする。
「もーっ、ジル、だめだよっ! ブルー君の相手はメイちゃんがするのっ。メイちゃん寂しがってるでしょ!?」
そう言ってジルを揺さぶるリュオンに、ジルは困惑し、そっと尋ねる。
「リュオンはあいつが好きなんじゃないのか?」
「まあ、ジルったら、おかしいことを言うのね!」
リュオンはしばしの間ぱちぱちと目をまたたかせると、めずらしくあきれたように笑った。
「だって、ブルー君はちょっとは身長伸びたけど、まだ全然ちっちゃいでしょ? ジルとちょっとしか違わないもん。『シュビハンイガイ』よっ」
どこでそんな言葉覚えてきたのだろうか、指をちっちっと振って言う。シルバーはさっと青ざめ当の本人に聞かれてないか反射的にあたりを見回した。いない。よかった。
「そうだったのか……それでは骨折り損だったな……」
「ブルー君がね」
額を押さえリュオンには聞こえない程度に舌打ちするジルにシルバーが付け足した。にらまれる。
「ジル、謝んないとだめだよー。めーわくかけちゃったもん」
「そうだねえ」
リュオンが注意するとジルは一瞬で猫かぶり顔になった。うーんと思案し、やがて両手を打ち合わせる。
「よし! お詫びに二人をくっつけてやろう!」
「ややこしくなるからやめ……」
「わあ! それってすっごく素敵ね!」
「素敵だろう!」
リュオンはぱあっと表情を明るくしきゃあと両の頬を手で覆う。ジルは満足げにうんうん頷いた。こうなってはもう何も言えない。喜んで計画を立て始めながらどこかへ行ってしまう二人を止めるべきかなあと悩み……結局面倒になってやめた。
*
『メイさん』
呼ばれて振り返ると、そこにはジルがいた。ジルはふわりと微笑む。
『あなたに話があるんだ。宿屋の端のさ、おしゃれなテーブルのある部屋を空けておくから、待っていてくれない?』
『ん……』
メイはそのときこくりとうなずいたけれど。
脳裏に浮かんだのは「彼と別れて!」という愛人の姿。
(シルバーはああ言うけど、やっぱり、ジルさんは……)
ブルーのことすきなんじゃないか。
ジルさんはきれいだから、ブルーも、ジルさんのことが好きなような気がしてくる。
ジルの好きよりメイの好きが勝っていても、結局ブルーに選んで貰えなかったら意味がない。
気持ちがうずまき、落ち着かない。
……別れてって言われたら、どうしよう。
そうしたらずっとはなればなれにならなきゃいけない。これからずっとここ数日のような退屈な日々を繰り返すと思うと気が塞いだ。たとえいつかはそれに慣れるにしても。
(いざとなったら、ジルさんに、俺とブルーとはそんなんじゃないってちゃんと説明して、なんとかそばにいさせてもらおう……それだけでいい)
うん、とひとまず決意を固め……でもやっぱり、と再びもやもやしはじめた瞬間、音を立てて扉が開いた。
――銀色の髪が揺れる。入ってきたのは、ジルではなく、ブルーだった。突然のことにメイは一瞬硬直し、息をのむ。
「……あ、あの」
何か言わないと、と口を開いたメイの声に、ことん、という音が割り入る。
ブルーが無言で机に差し出したのは、真っ白なティーカップ。
紅茶だ。
「こ、これ……?」
「……飲め」
説明を求む視線を送ると、ブルーは低い声でそれだけ言い、目を逸らした。メイは慌ててカップを手にとり、ちらとブルーの表情をうかがい、ためらいがちに飲む。
少し熱い。舌がかすかに痺れる。――飲み下すと、身体の芯からじわりと熱が広がり、冷え切った全身を温めた。かたくなになっていた顔の表情が解きほぐされる。メイは血液が巡り出すのを感じた。冷たい重い鎧を脱いだかのようだった。
「……おいしい」
思わず独り言のようにぽつりと零す。
ブルーはメイを見て、そうか、とつぶやいた。
*
「えへへっ。メイちゃん、よかったね」
こっそり部屋の扉に耳を当てて顛末を聞いていたリュオンはにこにこと幸せそうな表情をする。
「しかし、メイちゃんはどうしてあんなのがいいんだろうね……」
「? どうして?」
シルバーがため息をつくとリュオンが首を傾げた。だってさ、とシルバーは呆れ声で言う。
「ブルー君はしゃべらないし、怖いし、すぐ怒るだろ? たしかに顔はいいけどさ、性格もなんだか偏屈っていうか……気が利かないし、たぶん暗いし……」
そこまで言ってシルバーはリュオンの表情が青ざめていることに気がつき、声を詰まらせる。ブルーはリュオンの友達だ。悪い話をされて快いはずがない。それに、否定されたけれど、自分で気付いていないだけでリュオンも実はブルーが好きかもしれないし。……それが、シルバーがなんとなくブルーをけなしてしまう第一の原因なのだけれど。
「そんなに、ブルー君のことわるく言うなんて……」
「い、いや、違うんだリュオン、今のは実は褒め言葉で」
泣きそうな顔をするリュオンに、シルバーは慌てて釈明するが、うまく頭が回らない。リュオンが静かに口を開く。
「シルバーってもしかして、メイちゃんのことが好きなの?」
「……え?」
しばしシルバーは声を失う。だって、とリュオンは続ける。
「ブルー君のことそんなふうに言うの、ブルー君にやきもちやいてるからでしょ?」
「ち、ちが」
「私、シルバーのこと応援したいけど、メイちゃんは無理だよ……? シルバー報われないよ。大変……三角関係だわ」
もうすでにだいぶ報われていないし、リュオンのまわりは実際、三角関係どころじゃなくたいへんなのだけれど、シルバーは言わないでおいた。
(ジルの馬鹿……)
余計ややこしいことになったぞ。
シルバーは頭を抱え重く息をついた。
(……どこにいたんだ)
扉から聞こえてきたブルーの声にすかさずリュオンがドアに貼りつく。
(んーと……ほとんどシルバーのとこかな)
(シルバー)
ブルーが低くつぶやく。とりあえず山は越えたみたいだから、これ以上聞くのはやめてあげたほうがいいんじゃない、と言おうとしたシルバーの表情が凍り付く。嫌な予感が脳裏を過ぎる。抑揚のない声が怖い。
(うん、色々話聞いてもらっちゃった。シルバーって、今まであんまり話したことなくて分からなかったけど、意外といいやつなんだな!)
(……そうか)
(あ、ジュースおごってもらったぶん返したいから今度一緒にお茶しようと思うんだっ。どこかいいとこ、知ってるか?)
(……お茶)
メイはきらきらと無邪気に言い続け、リュオンもいい雰囲気!と喜んだのだが。
扉越しに黒いオーラを感じ、シルバーは一人、ジルの馬鹿、ともう一度頭を抱えたのだった。
「おお、リュオン、どうした?」
それに気づいたジルが手を振り、どうしたどうしたと頭を撫でようとするが、逆に肩をつかまれ目を丸くする。遅れてついてきたシルバーもぎょっとする。
「もーっ、ジル、だめだよっ! ブルー君の相手はメイちゃんがするのっ。メイちゃん寂しがってるでしょ!?」
そう言ってジルを揺さぶるリュオンに、ジルは困惑し、そっと尋ねる。
「リュオンはあいつが好きなんじゃないのか?」
「まあ、ジルったら、おかしいことを言うのね!」
リュオンはしばしの間ぱちぱちと目をまたたかせると、めずらしくあきれたように笑った。
「だって、ブルー君はちょっとは身長伸びたけど、まだ全然ちっちゃいでしょ? ジルとちょっとしか違わないもん。『シュビハンイガイ』よっ」
どこでそんな言葉覚えてきたのだろうか、指をちっちっと振って言う。シルバーはさっと青ざめ当の本人に聞かれてないか反射的にあたりを見回した。いない。よかった。
「そうだったのか……それでは骨折り損だったな……」
「ブルー君がね」
額を押さえリュオンには聞こえない程度に舌打ちするジルにシルバーが付け足した。にらまれる。
「ジル、謝んないとだめだよー。めーわくかけちゃったもん」
「そうだねえ」
リュオンが注意するとジルは一瞬で猫かぶり顔になった。うーんと思案し、やがて両手を打ち合わせる。
「よし! お詫びに二人をくっつけてやろう!」
「ややこしくなるからやめ……」
「わあ! それってすっごく素敵ね!」
「素敵だろう!」
リュオンはぱあっと表情を明るくしきゃあと両の頬を手で覆う。ジルは満足げにうんうん頷いた。こうなってはもう何も言えない。喜んで計画を立て始めながらどこかへ行ってしまう二人を止めるべきかなあと悩み……結局面倒になってやめた。
*
『メイさん』
呼ばれて振り返ると、そこにはジルがいた。ジルはふわりと微笑む。
『あなたに話があるんだ。宿屋の端のさ、おしゃれなテーブルのある部屋を空けておくから、待っていてくれない?』
『ん……』
メイはそのときこくりとうなずいたけれど。
脳裏に浮かんだのは「彼と別れて!」という愛人の姿。
(シルバーはああ言うけど、やっぱり、ジルさんは……)
ブルーのことすきなんじゃないか。
ジルさんはきれいだから、ブルーも、ジルさんのことが好きなような気がしてくる。
ジルの好きよりメイの好きが勝っていても、結局ブルーに選んで貰えなかったら意味がない。
気持ちがうずまき、落ち着かない。
……別れてって言われたら、どうしよう。
そうしたらずっとはなればなれにならなきゃいけない。これからずっとここ数日のような退屈な日々を繰り返すと思うと気が塞いだ。たとえいつかはそれに慣れるにしても。
(いざとなったら、ジルさんに、俺とブルーとはそんなんじゃないってちゃんと説明して、なんとかそばにいさせてもらおう……それだけでいい)
うん、とひとまず決意を固め……でもやっぱり、と再びもやもやしはじめた瞬間、音を立てて扉が開いた。
――銀色の髪が揺れる。入ってきたのは、ジルではなく、ブルーだった。突然のことにメイは一瞬硬直し、息をのむ。
「……あ、あの」
何か言わないと、と口を開いたメイの声に、ことん、という音が割り入る。
ブルーが無言で机に差し出したのは、真っ白なティーカップ。
紅茶だ。
「こ、これ……?」
「……飲め」
説明を求む視線を送ると、ブルーは低い声でそれだけ言い、目を逸らした。メイは慌ててカップを手にとり、ちらとブルーの表情をうかがい、ためらいがちに飲む。
少し熱い。舌がかすかに痺れる。――飲み下すと、身体の芯からじわりと熱が広がり、冷え切った全身を温めた。かたくなになっていた顔の表情が解きほぐされる。メイは血液が巡り出すのを感じた。冷たい重い鎧を脱いだかのようだった。
「……おいしい」
思わず独り言のようにぽつりと零す。
ブルーはメイを見て、そうか、とつぶやいた。
*
「えへへっ。メイちゃん、よかったね」
こっそり部屋の扉に耳を当てて顛末を聞いていたリュオンはにこにこと幸せそうな表情をする。
「しかし、メイちゃんはどうしてあんなのがいいんだろうね……」
「? どうして?」
シルバーがため息をつくとリュオンが首を傾げた。だってさ、とシルバーは呆れ声で言う。
「ブルー君はしゃべらないし、怖いし、すぐ怒るだろ? たしかに顔はいいけどさ、性格もなんだか偏屈っていうか……気が利かないし、たぶん暗いし……」
そこまで言ってシルバーはリュオンの表情が青ざめていることに気がつき、声を詰まらせる。ブルーはリュオンの友達だ。悪い話をされて快いはずがない。それに、否定されたけれど、自分で気付いていないだけでリュオンも実はブルーが好きかもしれないし。……それが、シルバーがなんとなくブルーをけなしてしまう第一の原因なのだけれど。
「そんなに、ブルー君のことわるく言うなんて……」
「い、いや、違うんだリュオン、今のは実は褒め言葉で」
泣きそうな顔をするリュオンに、シルバーは慌てて釈明するが、うまく頭が回らない。リュオンが静かに口を開く。
「シルバーってもしかして、メイちゃんのことが好きなの?」
「……え?」
しばしシルバーは声を失う。だって、とリュオンは続ける。
「ブルー君のことそんなふうに言うの、ブルー君にやきもちやいてるからでしょ?」
「ち、ちが」
「私、シルバーのこと応援したいけど、メイちゃんは無理だよ……? シルバー報われないよ。大変……三角関係だわ」
もうすでにだいぶ報われていないし、リュオンのまわりは実際、三角関係どころじゃなくたいへんなのだけれど、シルバーは言わないでおいた。
(ジルの馬鹿……)
余計ややこしいことになったぞ。
シルバーは頭を抱え重く息をついた。
(……どこにいたんだ)
扉から聞こえてきたブルーの声にすかさずリュオンがドアに貼りつく。
(んーと……ほとんどシルバーのとこかな)
(シルバー)
ブルーが低くつぶやく。とりあえず山は越えたみたいだから、これ以上聞くのはやめてあげたほうがいいんじゃない、と言おうとしたシルバーの表情が凍り付く。嫌な予感が脳裏を過ぎる。抑揚のない声が怖い。
(うん、色々話聞いてもらっちゃった。シルバーって、今まであんまり話したことなくて分からなかったけど、意外といいやつなんだな!)
(……そうか)
(あ、ジュースおごってもらったぶん返したいから今度一緒にお茶しようと思うんだっ。どこかいいとこ、知ってるか?)
(……お茶)
メイはきらきらと無邪気に言い続け、リュオンもいい雰囲気!と喜んだのだが。
扉越しに黒いオーラを感じ、シルバーは一人、ジルの馬鹿、ともう一度頭を抱えたのだった。
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