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オリジナル創作小説に関するあれこれを書き連ねる
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時空物語の改訂版冒頭案がいっぱいありすぎてもうわけが分からないので供養
冒頭は難しいですね!!!

 森は、煌々と燃え上がっていた。
 月の無い暗黒の地平線を、火柱と鮮血とがあかあかと染め抜いている。暴風に炎の波は容赦なく地を滑って燃え盛り、恵み豊かなる森を、いともたやすく呑み込んだ。新緑の天蓋は無残にも焼き払われ炭と化している。穏やかなせせらぎと乙女の歌声とが控えめに響いていたそこには今は、赤ん坊の泣き声と、くぐもった嗚咽と、剣戟の音とがあるのみ。
 
 枯れ草を、駿馬の蹄が薙ぐ。焦げ付いた煙が僅かに気道に入り、全身を引きつらせて噎せた。肉の灼ける臭い。目がつんと染みて涙が零れ落ちてくる。誰かの細い腕が、痛いほどに小さな背中を締め付ける。
 
 +++
 
 はっと、しなやかなバネを思わせる身のこなしで少女は跳ね起きた。

 夜中だ。

 静寂の底に、ざわざわという葉掠れの音のみが遠慮がちに響いている。まだ激しく脈打つ胸元を押さえ、土埃に薄汚れた窓を押し上げる。
 風が、乾いた音を立てて駆け抜けていった。枯れ草のにおいが包む。穴ぐらに身を潜める小動物よろしく、おそるおそる首を突き出す。

 とっぷりと暮れた闇が、広がっていた。細い三日月だけが、白い光をほろほろと零している。
 
 ――大丈夫だ。ちゃんと、森は、ある。
 
 窓際に備えた木製の机には、今朝がた折りとった、つややかなる葡萄の房が飾ってあった。
 メイは訝しげに表情を翳らせる。
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